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ドアの閉まった音を耳にして、ふとわれに返った。
見るともなく手前においている鏡を見ると、中に映っている様子に驚いた。一晩経っただけなのに、十年も過ぎたようなやつれた顔にはいったいなにがあったのか、自分さえわからなかった。黒のにじんでいる目の周りにしわが一層深まり、黒い瞳に底知れぬ悲しみが宿っている。
初めて限界というものを知って、それを超えたら自分はどうなるかという恐怖感に怯えて仕方がなかった。
いったい、自分は倒れていくのか、それとももう倒れたのか。それを知りたがっているのに、思考中枢がまるごと抽出されたように、あるいは頭は体を守るため自ら思考を遮断したのか、なにも考えられず、ただ機械的に目の前の仕事をやりこなしていくことしかできなかった。
もう、戻れないのだ。
知っているのは、それだけだった。まるで神の裁きを受けたかのように、自分の運命と漠然と向かい合った。だんだん自分が生きているのかさえわからなくなり、仮死状態が続いていく。
「遠く行ってしまったのは、私だった」
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